本棚にねこまんま

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ねこ と ごはん

【私という猫】太く短い野良猫の一生

おすすめ度★★★

野良猫を見かけるとき、私はいつも緊張します。
ただ手放しに「可愛い」という感情だけで近づくことができないからです。

野良猫は短命です。

車に轢かれるもの、蔓延する病気でボロボロになるもの、
縄張り争いにより生傷が絶えず、
中には悪意ある人間に捕まるものもいます。
そんな厳しい世界で生きるものたちがいることを、
私たちに思い出させてくれる作品です。

可愛い、だけでは語れない野良猫の世界

この本、可愛い猫に癒されたい人にはおすすめできません。
もちろん可愛い猫もたくさんいます。
のうてんきなポンタはこの本で唯一の癒し担当でしょう。
強面だけど心優しいボス、面倒見のいい美しっぽ姉さん、
元飼い猫でちょっとずれてるハイシロー、みんな可愛いです。

ただ、可愛いだけじゃないのです。
死と隣合わせで生きている野良猫たちには、
常に獣くさいどろどろした空気が纏わりついています。

「ねこかわいい~」とうかつに読んでしまうと
牙をむき、爪をたてられ、トラウマになりかねない本なのです。


野良は”強く短く” 飼われは”弱く長く”

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(出典 私という猫/イシデ電)

野良猫の「私」が飼い猫のポンタに向けた台詞です。
飼い猫と野良猫はもはや別の生き物といっても過言ではありません。

飼い猫は弱いのです。

我が家の猫にも「君は外じゃ生きれないね」なんてよく言います。
来客のチャイムにすら身を隠す臆病さと、
寝返りをうってキャットタワーから転げ落ちるどんくささ。
それにくわえて私の住まいは幹線道路沿いです。
外に出たらすぐに車に轢かれてしまうでしょう。
ごはんは定位置で鳴けば人間が出すものだと思っているし、
狩りの疑似体験といえる遊びにおいても
何度でも捕まえるチャンスがくると思っています。
外に出たらたとえ車に轢かれなくても、すぐに飢え死にしてしまいます。

しかし、毎日きまって窓の外を眺めながらきゃきゃきゃっと鳴くのを見ると、
家にとじこめてしまっている罪悪感が沸き起こります。
野良猫の姿が猫本来の姿だとすれば、
飼い猫は自由を束縛されて不幸だともいえます。
その一方で自然界の危険に脅かされることなく、飢えに苦しむこともない。
どちらが幸せな生き方か、というと人それぞれ見解は分かれるでしょう。

野良猫と飼い猫。
それぞれの場所で、まったく違う生き方をする、同じ生き物。
ふたつをこんなにも隔ててしまっているのは猫の適応能力の高さと、
紛れもなく人間のエゴです。
飼い猫になるかどうかを猫に選ぶことはできません。

野良犬がいなくなったように、いつか野良猫がいなくなったとき、
人は何を思うでしょうか。
きっと、これで猫の不幸な死を目にしなくて済む、と胸をなでおろしながら、
一つの種が絶滅したような寂しさがそこにはあるのです。



続刊 現在はイシデ電先生のHPにて不定期連載中です